第22回(2008年度)地域安全学会研究発表会(春季)報告

第22回(2008年度)地域安全学会研究発表会(春季)の発表会では、以下のA〜Fに示す分野に関する36編の論文の発表があった。発表はこれらを6つのセッションに分け、3会場で同時に行った。また、韓国防災学会からの発表を含む2編の論文発表について特別セッションを設けた。発表時間は1題あたり発表10分、質疑2分とした。参加者は約100名であった。

  • 被害予測と緊急対応:(4編)
  • 被災者の自立と社会的支援:(2編)
  • 防災計画と対策:(4編)
  • 都市施設の防災性向上と許容リスク:(3編)
  • 突発事故・災害:(2編)
  • 一般セッション:(21編)
  • 特別セッション:(2編)

A会場

A-1セッション 5月30日13:00〜14:24

A,B,C分野の7編について発表と質疑応答が行われた。

A-1.「デジタル航空写真を用いた新潟県中越地震時の高速道路被害抽出」

(丸山喜久・千葉大学大学院他)

新潟県中越地震後に撮影したデジタル航空写真を用いた、高速道路における地震被害自動抽出の検討に関して発表がなされた。その結果、デジタル写真はアナログ航空写真と比べて画像の平滑化を行う必要がなく、またセンターライン付近に発生するノイズは適切なノイズ除去により解決可能であるとの結論が説明された。今後は、中央分離帯や植生の影の影響を除去することが課題となる。

A-2.「携帯電話への被害推定結果配信と緊急地震速報を利用した場合の考察」

(遠藤真・総務省消防庁消防大学校消防研究センター他)

簡単かつ迅速に地震被害の凡そを提示することができる簡易型地震被害想定システムについて、能登半島地震、新潟県中越沖地震に関する試験運用結果が報告された。その結果、各報ごとに被害数が大きくばらつくが、1分後の最終報に関しては実被害に近くなることなどが明らかにされた。その他に、メールの配信までに時間がかかるという問題点と共に、Webページの形成を別スレッドで行い、被害集計結果だけをメール配信するなどの解決策が提案された。

A-3.「携帯電話を用いた災害時の情報収集システムの開発-その2、一般住人による実証実験-」

(鄭炳表・独立行政法人情報通信研究機構他)

携帯電話を用いた災害情報収集システムに関する実証実験の報告がなされた。実証実験は香川県高松市で29人の一般住民を対照として行われたものであり、ほとんどの被験者が問題なくシステムの操作を行えたことが明らかにされた。今後は、システムの高度化と検証が課題となる。

A-4.「限られた実被害情報に基づく全被害数の推計」

(座間信作・消防庁消防大学校消防研究センター他)

時々刻々入手される実被害情報に基づく、全体被害数の更新推定方法について発表が行われた。このシステムを新潟県中越沖地震へ適用することより、被害概要が把握されていない状況下において有用なものになりうることが明らかにされた。またこれはExcelベースで構築されたため、自治体などに配布が可能と考えられる。会場からは、被害情報の時系列把握に対してワイブル分布を仮定することの妥当性についての質問があがった。

B-1.「首都直下地震に向けた復興状況の想定トレーニング手法の構築に関する研究:中間報告-埼玉県における取り組み-」

(加藤孝明・東京大学大学院他)

埼玉県を対象とした、首都直下地震後の復興状況を想定するためのトレーニング手法に関して発表が行われた。発表では、復興状況を生活再建と市街地復興の2通りの視点で捉え、自治体職員とともにワークショップを行った様子や成果などが提示された。また近い将来の課題として、広域の計画調整についての議論が行えないこと、全体として論拠があいまいなことなどが挙げられた。会場からは、時間軸の取り扱いなどに関して質疑が行われた。

B-2.「地震後の住宅再建支援に関する市民の考え-新潟県中越地域での試行調査から-」

(塩野計司・長岡工業高等専門学校他)

住宅再建に対する社会的支援のあり方を、「公的な支援金の支給額と義捐金の配分額の和がどのように決定されるか」との問題におきかえ、その検討と考察について発表が行われた。発表では支援の原則(判断基準)として7項目を提示し、住民を対象としてアンケート調査を行った結果などが提示された。その結果、借入回避、収入依存に関してはあまり賛同が得られなかったが、その他の項目に関しては約9割の賛同が得られたことなどが明らかになった。

C-1.「自主防災組織の活動実態に関するアンケート調査-神奈川県県央地域の15市町村を対象として-」

(山本俊雄・神奈川大学他)

神奈川県県央地域の自主防災組織を対象とした、アンケート調査の結果と考察に関して発表がなされた。ここでは組織の活動実態や組織構成を明らかにするため、質問項目を「組織の構成」、「平常時の防災対策」、「防災訓練の内容」、「被災後の対応力」、「防災マップについて」に分類し、調査を行った。結果として、行政主導の防災訓練には高い回答があったが、その多くは1年に1回であること、防災マップの認知度は高いことなどが明らかにされた。

(文責:廣井悠)

特別セッション 5月30日14:30〜14:54

特別セッションとして以下の2編の発表と質疑応答が行われた。なお、発表および質疑応答は英語にて行われた。

S-1.「Seismic Vulnerability Analysis for Non-Engineered Housing in Marikina, Philippines」

(Satoshi TANAKA・Fuji Tokoha University, et al.)

フィリピンで一般的な、組積壁を有するRCフレーム構造建物の耐震性能を明らかにするために、実大モデルを用いて荷重載荷試験を実施している。また、現状の耐震性能をあげるために柱の拡幅などの補修案を提示し、補修後の効果を確認している。発表に対して、研究における実験条件などの議論がなされた。

S-2.「Sensitivity of Reinforced Concrete Frames to Uncertain Component Capacity」

(Tae-Hyung Lee・Konkuk University, et al.)

地震荷重下の構造物の各部位の挙動を把握するために、信頼性アプローチを用いている。
RCフレームに対して、FOSM法により荷重および耐力の不確定性を考慮した応答解析を実施し、最も影響の大きい部位を特定することを試みている。発表に対して、各確率変数の設定方法などに関する議論がなされた。

(文責:林孝幸)

A-2セッション 5月30日15:00〜16:00

C,E分野の5編について発表と質疑応答が行われた。

C-2.「耐震補強工事に関する行動分析と助成額の最適化」

(廣井悠・東京大学大学院他)

本研究では、木造住宅の耐震化を最重要課題としてとらえ、住民の意思決定構造を考慮した助成額の検討、不確実性を考慮した評価手法、経済的効率のみならず被害量の最小化も視野に入れた多目的最適化への展開をふまえて助成制度について分析している。発表に対して、研究で使用しているハザード曲線に関する議論がなされた。

C-3.「地震災害時における地域レベルでの災害情報システムの構築」

(林貴行・東京理科大学大学院他)

本研究では、地震災害発生から3日間を目安に地域住民を支援する災害情報システムの構築へ向けた検討を行っている。このシステムは、常時には自治体による地震災害に対する備えの啓蒙や、避難所等における地震災害に対する備蓄の情報の提供を行うことを担うことを目指している。発表に対して、災害直後にFMラジオなどから提供される情報とこのシステムが提供を目指す情報の違いは何であるのかについて議論があった。

C-4.「2007年新潟県中越沖地震における建物被害認定調査プロセスに関する考察 −柏崎市における再調査の事例−」

(田中聡・富士常葉大学大学院

本研究では、建物被害認定調査に関して、新潟県中越沖地震における柏崎市の建物被害調査プロセスを明らかにし、それをふまえて大規模災害時における課題を検討している。発表に対して、柏崎市での建物被害認定調査で再調査を希望する場合にはどのような特徴があったかなどについて議論が行われた。

E-1.「2006年首都圏大規模停電の影響波及に関する考察」

(能島暢呂・岐阜大学)

本研究では、2006年8月に発生した首都圏大規模停電に関して、停電の影響波及の概要を取りまとめて関連要因を分析し、基礎的考察を行っている。発表に対して、ライフライン影響波及に関する数値解析を行う際の基本データのメッシュ解像度をどの程度考えているかなどについて議論があった。

E-2.「神戸市の東灘区青木(おうぎ)不発弾処理における対応の分析」

(東田光裕・西日本電信電話他)

本研究では、平成19年2月に神戸市東灘区青木5丁目で発見された不発弾に関して、処理にいたるまでの一連の対応内容を整理した記録の作成過程と対応内容の分析結果について報告された。発表に対して、不発弾処理における警戒区域がどのように決められるのかなど議論があった。

(文責:丸山喜久)

B会場

B-1セッション 5月30日13:00〜14:24

D,F分野の7編について発表と質疑応答が行われた。

D-1.「老朽住宅の耐震改修促進策に関する一考察−賃貸住宅支援と固定資産税軽減の縮小措置の提案−」

(紅谷昇平・人と防災未来センター)

本論文では、賃貸住宅の耐震改修推進のために、入居者との権利調整支援策を提案している。また戸建て住宅について、耐震改修が経済メリットにつながるよう、固定資産税の増税を検討した。
コメント:「賃貸の場合お金でなく権利関係が補強の障害になっている、分譲マンションについても合意が難しい」、「登録免許税も上げたらどうか。」

D-2.「北海道旭川市におけるCVFを用いた都市防火性能評価」

(戸松誠・北海道立北方建築総合研究所他)

本論文では、防火・準防火地域等の指定に関して客観的な説明が求められることから、旭川市の都市防火性能を明らかにすると共に、CVFにより延焼拡大危険地域を抽出し、その要因を明らかにした。
質問「大切な研究であり、今後防火地域の見直しをどうするか」
→答「用途が近隣商業地域など危険度の高い所にかけるのが基本で、今回は指定を外す所が出てきそうである。」
質問「この手法ではどの家が危険かわかる。市民にどこまで公開するか。」
→答「戸別の状態を公表するのでなく、基準を決める条件と地域分布を示す。」

D-3. 「つくば市における停電による日常生活への影響評価」 (石橋絵美・筑波大学大学院他)

(末澤弘太・徳島新聞社他)

本論文では徳島県民への防災啓発として、生活情報紙・新聞・インターネット等、身近な媒体とマンガやイベントを使って「やさしく」「たのしい」「まなぼうさい」の取り組みとその効果を論じた。
質問「新聞社でこの取り組みを始めたきっかけは何か。」
→答「企業イメージアップと広告ベースで予算的にペイする企画をねらった。」
質問「お母さんたちグループから、コミュニティへの防災拡がりの効果はあるか。」
→答「コミュニティへの浸透は未だである。」

F-2. 「地域における地震体験談の収集と共有」

(森伸一郎・愛媛大学大学院他)

本研究では愛媛県内で1946年昭和南海地震の体験談を聞き取り調査し、記憶が具体的で震度推定につながる、若い世代に伝える力があり、地域防災活動に有効であることを示した。
質問「震度や新被害が判るにしても、記憶のゆがみや信頼性の確認はできるか。」
→答「震度4が瓦のずれ等、震度5が壁にキレツ、墓石・石垣被害、液状化等から推定できる。」
質問「1944年南海地震をヒアリングしたことがあり、悲惨な体験で子や孫に話してこなかったという高齢者がいた。今回の対象者は体験を伝えてきたのか。」
→答「殆どの人は伝えてこなかった。松山市では前年に空襲があり、その方が悲惨な体験だった。」

F-3. 「自宅や地域に対する耐震安全性認識と防災意識の関係」

(久木留貴裕・愛媛大学大学院他)

本研究では津波被害が予想される高知県宿毛市と愛媛県愛南町の地域住民を対象に、防災講習、アンケート調査、防災WSを行い、自宅の耐震性と補強意志のバイアス等について検討した。
コメント:「昭和56年前後で、一般住宅はそこまで耐震性が変わっているのか。昭和56年築でも既に25年以上たち、劣化していれば補強が必要だろう。」

F-4. 「有珠山周辺地域における防災教育の取り組み」

定池祐季・北海道大学大学院)

本研究では繰り返し噴火する有珠山周辺での防災教育取り組みを例に、実施主体による整理・分類を行い、成果と課題が考察されている。
質問「調査研究で訪れる人もミイラ取りがミイラになる地域性はどこから来るのか。」
→答「住民が熱心で、研究結果を地元で話てと頼まれるし、学校や住民に話すとやり甲斐ある。」
コメント:「火山防災で目指すのは、火山のしくみを知り、事前に避難すれば助かる、有珠山の恵みを知ることだろう。」

(文責:村上ひとみ)

B-2セッション 5月30日15:00〜16:00

F分野の5編について発表と質疑応答が行われた。

F-5. 「自治会加入者層の防災意識・対策の実態と今後の地域防災力向上に関する研究〜保土ケ谷区民会議のアンケート結果の考察から〜」

(岡西靖・横浜国立大学他)

著者から、横浜市保土ヶ谷区の自治会加入者層の防災意識(区民会議調査)と一般市民の防災意識(区民調査)を比較分析し、自治会役員・防災担当層については防災情報の認知や防災意識が高いこと、一般区民の中にも防災活動の積極層があり防災リーダーとして期待されること等が報告された。

参加者より、アンケートの対象者について、一般対象の区民調査では標本抽出でまんべんなくサンプリングされているが、防災リーダーに対する区民会議では高齢層が過半数という点が指摘され、年齢層を合わせるなど今後の分析に向けた改善策について意見交換がなされた。

F-6. 「地域間地震防災フォーラムによる地域バイアス認識の試み」

(神野邦彦・愛媛建設コンサルタント他)

著者から、愛媛地震防災技術研究会が南海地震に備えて愛媛県愛南町と高知県宿毛市で実施した「わが家と地域の耐震」をテーマにしたアンケート調査結果において、自宅の耐震性について自宅周辺での比較により判断する地域間の認知バイアスが存在し、地域間フォーラムが地域バイアスを取り除く一助となりうる可能性があるとの報告があった。

参加者から、2地区の住宅耐震性に対する自己評価結果の信頼性について質問があり、著者から、専門家の印象においても2地区で違いがみられたとの回答あった。また、両町の耐震補強の助成制度の違いに対する質問があり、愛南町では不明、宿毛市では制度はあるものの実績が非常に少ないとの回答があった。

F-7.「大学における自転車利用モーダルシフトと防災効用に関する考察」

(村上ひとみ・山口大学大学院)

著者から、山口大学を事例としてマイカー通勤の実態と環境影響について調査した結果、環境・防災面において自転車利用のメリットがあり、その推進のためには個人にとってインセンティブとなる健康増進、駐車料金システムの出来高制への変更、エコポイント制度等が必要との報告があった。

参加者から、学生の環境・防災意識について質問があり、主観的印象として意識はあまり高くなく、その要因の一つを大学側の環境学習等の試みの少なさとする回答があった。また、キャンパスの立地条件についての質問があり、自転車が使いにくい道路環境であることから、自転車利用者の発言力を強めたいとの回答があった。

F-8.「災害時の地方自治体首長の役割に関する一般的考察―災害対応を経験した首長に対する調査報告―」

(越山健治・人と防災未来センター他)

著者から、災害対応を経験した首長へのインタビュー調査等により、首長の災害時の役割として「被災者への情報提供・意思伝達」、「外部への支援要請」、「対応している職員への意識喚起」「被災地の住民状況のモニタリング」「組織対応の全体の方向付けとマネジメント」があり、組織としての災害対応では首長と自治体職員との状況認識の一致が重要との報告がされた。

参加者から、自衛隊の活動場所・目的の協議時期について質問があり、被災状況が不明な状況では人命救助を目的として、自衛隊は独自に情報を収集し判断するとの回答があった。また、サンプル数の少ない途上段階の研究であるため、首長への質問事項や回答分類などの方法論が重要とする指摘があり、著者から組織研究など他分野の取組も参考にしたいとの回答があった。

F-9.「緊急地震速報の一般向け報知に関する検討」

(鈴木崇伸・東洋大学工学部他)

著者から、リアルタイム地震情報利用協議会の緊急地震速報伝達方法検討WGにおける緊急地震速報を知らせるサイン音・ピクトグラムの検討成果について、6種類のサイン音やピクトグラムの案からアンケート調査により選択されたプロセスや、病院、市役所、百貨店での実証実験の結果、報知法の標準化の重要性等について報告がされた。

参加者から、著者が提案したREICの音声の採用状況について質問があり、約100社の実績があるとの回答があった。またNHKの音との比較については、開発経緯や導入実績数のデータがなく、比較出来ないとの回答があった。さらに人の声を利用することの課題についての質問に対して、雑音に弱いことが最大の課題との回答があった。

(文責:紅谷昇平)

C会場

C-1セッション 5月30日13:00〜14:24

F-10. 「台湾921地震後の地域再建支援施策に関する研究」

(照本清峰・ひょうご震災記念21世紀研究機構他)

Q 1999年台湾地震の地域再建には日本からの専門家による支援もあったが、いつの時点での支援が最もインパクトがあったのか?

A 地震後から約半年間であり、図2の地域の再建過程モデル(5段階)では第2段階に相当する。

F-11.「想定災害後の住宅再建選好分析のための仮想インターネット調査」

(佐藤慶一・東京大学他)

Q アンケートの質問内容がやや複雑な印象を受けるが、回答の信頼性についてはどう考えているのか?

A アンケートにはネット調査を用いており、回答者はきちんと回答をしないとポイントがもらえないシステムのため、ある程度の信頼性はあると考えているが、今後、個別に回答結果を調べていく必要もあると考えている。

Q 東京湾北部地震が発生した後の住宅再建の選好を尋ねる際、地震動(地震の揺れ)による住居被害についてのみ尋ねているが、地震火災による住居被害は考慮しなくてよいのか?

A アンケートでは、住居の被害程度(全壊、半壊)について尋ねているだけで、災害の種類(地震動、火災)については言及していないため、火災による被害も含まれていると考えている。

F-12.「サイクロンリスク証券化におけるパラメトリック・トリガーの条件設定に関する考察」

(渡部弘之・アジア防災センター他)

Q 最近、バングラディッシュやミャンマーでサイクロンによる甚大な被害もあったので、サイクロンの研究はホットな話題だと思うが、このような研究はアジアの発展途上国では行われているのか?

A 発展途上国では観測があまり行われておらず、適切なデータがないため、サイクロンに関する研究はなかなか行われていないのが現状である。

F-13.「能登半島地震・新潟県中越沖地震における企業被害調査」

(中野晋・徳島大学他)

Q 能登半島地震・中越沖地震でいくつかの企業の被害状況をヒヤリングしているが、これらの企業を選んだ理由は?

A 地方都市での経済的被害は地域全体の活性化に影響するため、商店街、地場産業(漆器、酒造業など)、企業のBCPの構築状況などの観点から選んだ。

Q 中島酒造(能登半島地震で被災)は自力再建したのか、それとも酒造業界による再建支援があったのか?

A すべての酒蔵が全半壊したため、再建するには多額の借金が必要であり、借金を次の世代に残してしまうことを悩んでいたが、後継者(経営者の息子)が再建を強く望んだため、自力再建の道を選んだ。

F-14.「マクロデータ分析に基づく京都市観光関連産業の地震被害想定」

(水田哲生・立命館大学他)

Q 能登半島地震では能登有料道路の被害が大きく影響したが、京都市の場合、経済被害を最も効果的に減らすにはどのような防災対策から着手すべきと考えるか?(中野@徳島大)

A 清水周辺は、地震の揺れが大きいことに加えて、坂が多いため土砂災害の被害も考えられ、かつ観光客も多いことから、この地域から優先的に対策をするのが効果的と考える。

F-15.「現実的な目標復旧時間決定方法」

(川口均・船井電機)

Q 許容中断時間は、これ以上長くなると企業が倒産してしまうという最低レベルの時間のことか?

A その通りである。

F-16.「サプライチェーンを考慮した事業停止期間の確率論的リスク評価」

(福島誠一郎・東電設計他)

Q 地震動ハザードと建物のフラジリティの相関は、最終的な結果に大きく影響すると思うが、どのように取り扱っているのか?

A 地震動は完全相関を考え、フラジリティは無相関を考えているので、これらによる建物被害は部分相関を考えていることとなる。

(文責:藤本一雄)

C-2セッション 5月30日15:00〜16:00

以下の5編について発表と質疑応答がなされた。

F-17.「地震ハザードの低確率リスク情報に対するリスク認知特性」

(藤本一雄・千葉科学大学)

本研究では、地震ハザードの低確率領域におけるリスク情報に対するリスク認知特性を探るため、6段階の低確率リスクに対するリスク認知のAHPによる評価を行っている。確率2%程度以下のリスクに関しては、確率0%のリスクと同程度の危険性しか感じていないことなどが報告された。「確率論的地震動予測地図」における低確率リスク地域に居住する住民へのリスク情報提示などについて議論がなされた。

F-18.「ボランティア組織による災害GIS情報作成活動〜航空写真判読によるブルーシートマップの作成〜」

(加藤千香子・株式会社パスコ他)

災害発生地域の早期被害状況把握および応急措置状況把握を目的として、新潟県中越沖地震を対象災害として、平成20年2月に実施された「航空写真判読によるブルーシートマップの作成活動」について紹介があった。ボランティアが遠隔地からGIS情報作成活動に参加し、被災地の復旧・復興に貢献するという活動の有用性が報告された。発災後のGIS情報作成までにかかる時間等、今後の課題への取組について質疑がなされた。

F-19.「歴史都市における社会継続計画(SCP)システム」

(Jungyoung, PARK・立命館大学)

「保全」「防災」「地域活性化」「観光」という視点から継続的な歴史都市の継承の戦略としての社会継続計画(SCP(Social Continuity Plan))について発表された。特に、観光客に着目し、平時において観光リピーターとなることで地域活性化に貢献し保全に寄与し、災害時には支援者として位置づけられることを報告された。

F-20.「一様ハザードスペクトルによる構造特性を考慮した地震リスク評価」

(大峯秀人・東京海上日動リスクコンサルティング他)

全国7都市の再現期間ごとの一様ハザードスペクトルを地震ハザードとして、現行の耐震基準により設計された建物の構造特性を考慮した地震リスク評価を行なった結果を報告された。地震ハザードを一様ハザードスペクトルで表現した場合、同じ構造特性を持つ建物でも地域間で地震リスクが異なること、現行の耐震基準を満たす建物であってもその建物の固有の構造特性によって異なる地震リスクを保有することなどが発表された。報告された地震リスク評価の社会的利用や課題等について議論があった。

F-21.「地域的な資産状況を考慮した地震リスク量に関する検討」

(林孝幸・東京海上日動リスクコンサルティング他)

被災者の住宅再建支援策として地方自治体が独自に政策を実施する場合の必要資金の確率論的評価について、横浜市を対象とした適用試算を中心に報告がなされた。必要資金が予算規模から見ても大きな額になる可能性があり、そのような際には、証券化の手法を用いて金融市場から資金調達をすることで、円滑な生活再建支援が可能とすることについてなどの説明があった。発表にあった必要支援金額のイベントカーブについての質疑等があった。

(文責:佐藤慶一)